第16章 アダムとイヴの林檎
『…勝手に危険なことはしない、ってあの日約束した。百も、千ちゃんも、私も。…でも三人でなら、なにも怖くないよ。たとえ火の中に飛び込もうとも、危険な橋を渡ろうとも……百と千ちゃんが一緒なら。何も、怖くなんてない』
「零……」
「そうだね。零のいう通りだ。アナーキーでいいじゃない。危ない橋、渡ってみよう」
そういいながら、千はふっと笑った。
「…それに。運動部の始まりは、零とモモだ。それが今じゃあの月雲を脅かすほどの存在になったんだ。二人ならできるさ。僕もいる。ここから始めよう」
『…え?どういうこと?』
千の言葉に、零は不思議そうに首を傾げる。
「零には話してなかったね。元はと言えば、あの運動部をモモが作ろうと思った発端は零なんだよ」
「ちょ、ちょっと、ユキ!」
慌てる百を抑えながら、不思議そうに首を傾げている零に向かって千は話し始めた。
「……モモが、君のために始めたことなんだ。信用できる人を集めて、一緒にスポーツをして…そうすれば、嫌でも仲良くなるだろう。スポーツを通せば、人の表情もわかるようになる。業界人と仲良くなれば、芸能界で生きやすくなる。小鳥遊プロはうちと同じでバックアップがない。だから、自分たちが君のバックアップになれるようにって。人見知りの君が、たくさんの人に囲まれて、賑やかな輪の中心でずっと笑っていられるように――そんな願いを込めて」
千の言葉に、零は大きく目を見開いた。
趣味で始めたと思っていた運動部に、そんな理由があったなんて。