第16章 アダムとイヴの林檎
「……間に合わせてあげられなかった」
ゼロアリーナの見える海沿いで、悔しそうに百が言った。
「拉致の証拠はいくつか集まった」
『そうだよ。楽のパパがツクモを訴える時に役に立つはず!』
「個人の犯行、ストーカーで通されたら、了さんにまで手が届かないよ…。…オレたちの番組で、TRIGGERを守ってあげたいけど、そうしたらスタッフに迷惑がかかる。どうすれば……」
俯く百に、零が思いついたように口を開く。
『じゃあ、作っちゃえばいいじゃん。うちらで』
「え……?」
『現代の千葉サロン』
零の言葉に、百は目を見開く。
いい案だ、とぼやきながら千が続いた。
「ひとりひとり反抗しても潰される。だけど、ツクモのやり方に不満を抱いている人は必ずいる。なら、零の言う通り、組織すればいい」
「……できると思う?」
「僕は無理だけど、モモなら。運動部だって作ったんだ。その人脈だってある。できるさ。ねえ、零」
『うん!』
「……危ない橋だよ。零とユキを巻き込むかもしれない。そんな危険な橋は、渡りたくない」
そういって俯く百の背中を、零がぽんぽんと優しく叩いた。