第16章 アダムとイヴの林檎
「すみません!ご心配をおかけしました…!」
慌てて控室に入ってきた龍之介に、姉鷺は泣きそうな表情で駆け寄った。
「龍之介!ああ、良かった……!」
「二人は!?」
「うちの子たちが探してます。時間がないですよ!早く衣装に着替えた方が…!」
「わかりました!みんなにありがとうって伝えて!それから…二人を頼むって」
「わかりました!」
龍之介が衣装に着替え、準備をしている最中――大和・壮五・環の三人も、味方のふりの芝居をして犯人たちに楽の居場所を移動させるように指示し、その隙に楽を救出することに成功。そして、三月・陸も駆け付けたナギの助けによって天を助け出すことに成功した。
楽と天を助け出したときには、公演までもう20分を切っていた。
「TRIGGERさん、そろそろ……。他のおふたりは?」
ステージ袖で、スタッフが痺れを切らしたように姉鷺に問う。
「…急な事情でまだ到着していないの」
「そんな……!」
「二人は必ず来ます!必ず来て、TRIGGERの新曲を歌います。信じて待って行ってください!」
龍之介の言葉に、スタッフはため息をつきながら続けた。
「…わかりました。もう公演は始まっています。出演キャンセルなんてしないでくださいよ」
「わかりました。ご迷惑をおかけして申し訳ありません」
龍之介と姉鷺が必死に頭をさげていれば、後方から声がする。
「おやおや。凋落のTRIGGERじゃないか」
「よう、龍之介」
振り返ってみればそこには、了と虎於が立っていて。龍之介は慌てて口を開いた。