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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第16章 アダムとイヴの林檎




――ツクモ本社ビル




「交渉しちゃだめだって」


資料室で、千がスマホを見つめながら言った。


「ヤバそうな人たちとか言うからだよ。おじさん、名刺持ってない?ちょっと、背広に手え入れるね」


先程のガラの悪い男は、見事に拘束されていた。
かつて、血のイヴ事件にて”狂犬”と呼ばれた百に、一人がかりで敵う訳がなかったのだ。ガムテープでぐるぐるに手首と足首を拘束されながら、男は三人を睨みつけている。


「…っ、離せ…!」

「あった!本名はわかったけど、すごいそれっぽい名刺だ…」

「見なかったことにすれば?」

『そうだよ。新しいの作っちゃえば?』

「だね!あそこに印刷機あるし、おじさんの新しい名刺作っちゃおう!職業は何がいいかな?」

「イラストレーター」

「ラブリーだよ、ユキ!」

『水玉模様の名刺にしちゃおう』

「いいね!熊倉さんって名前だから、熊さんのイラストも配置しちゃおう!」

「クマさんの横に、ハートマークもいれよう」


三人はきゃっきゃと楽しそうにデザインを考えながら、熊倉さんの名刺をシュレッダーにかけ始めた。


「てめえ、誰がイラストレーターだ!おい!ドヤ顔でレイアウト画面見せるな!勝手に人の名刺をシュレッダーにかけるな!」

「僕が可愛がってる子たちに、勝手に手を出したのは、おまえらだろう。あの子たちの居場所を答えろ。答えないと……」


言いかけてから、千がちらりと零と百を見る。


「……殴るぞって交渉?」

『脅迫だよね』

「訂正して!」

「ごめんね。不適切な発言がありました」

「イラストレーター熊倉さんに健全な交渉!テイク2!」

「イラストレーター熊倉さんのチャレンジ。3人を連れ去ったことを認めよう」

『イラストレーター熊倉さんのチャレンジその2。連れ去った3人の居場所を教えよう!』

「こっ、こいつら……!ふざけやがって……!!」




こうして、三人の健全な交渉の甲斐あってやっとTRIGGERの居場所を聞き出すことに成功する。


――公演開始まで、残り一時間。


ナギが龍之介の捉えられている場所を見つけ、巧みな話術と作戦で無事龍之介を救出することに成功。龍之介を急いでゼロアリーナへと向かわせた。

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