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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第16章 アダムとイヴの林檎




『……え…だって、みんなで一緒に行こう、って今決まっ――』

「絶対にだめ」


零の言葉を、百が強く遮った。


『………』

「だめ。それだけは絶対に許さない」


百の瞳は真剣で、そこにいつもの優しい百はいない。あの日了の家で居合わせた時に見せた、あの時の瞳だった。


『…でも……』

「絶対、天たちを助け出すから。約束する。だから……ね?」

『……。……嫌だよ。じっとただ待ってるなんて、そんなことできるわけないじゃん…!確かに私は女だし、お荷物かもしれないけど…女にしかできないことだってあるんじゃないの!?男にはできない、たとえば――』

「零。それ以上言ったら怒るよ。……冗談でもそんなことは言わないで」


言おうとしたことを悟ったのか、真剣な瞳のまま冷静に言う百。零は罰が悪そうに視線を反らしてから、三月たちの方へ行こうとすれば。ぐっと腕を掴まれた。


『…離してよ、百!』

「離さない。行かないって言うまで、絶対に離さない。零は女の子なんだ。こうしてオレに腕を掴まれても、振り払うことだって、逃げ出すことだって出来ない。…危険な場所に、行かせるわけにはいかないよ」


ぎゅっと掴まれた腕を見てから、零が顔をあげれば。怒ったような声音とは反対に、心底心配そうに眉を下げている百がいて。


『………』

「……お願い。零、行かないで。これだけは譲れない。お願いだよ……」


掠れる声で、泣きそうな顔で言う百をじっと見つめてから、零は小さくため息をついた。


『……ずるいよ。……百にそんなふうに言われたら、私が断れないの知ってるくせに…』

「ありがとう、零。ごめんね」

『うん……。でも、何かしたい。危険なことはしないって約束するから…。だから、何かできることをさせて。お願い』

「モモ。僕も」


二人の会話を聞いていた千が、口を開いた。


「三人でなら、大丈夫だ。前に言ったはずだよ、モモ。モモと僕で、零を守るって」


千の言葉に、百は困ったようにはあ、と息を吐いた。


「……わかったよ……。じゃあ、オレと一緒に来て」

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