第16章 アダムとイヴの林檎
言い合う三月と一織の横で、大和が千に問う。
「千さんは?喧嘩できるんですか?」
「こう見えて黒帯だよ」
「嘘でしょ!?」
「うん」
「……インドア派の千さんは、零ちゃんと陸と一緒に、ベンチで応援してくれると元気が出る幼馴染枠!」
「「フレフレ!」」
『私はそんな枠嫌だよ!!』
ぎゃあぎゃあと騒ぎ出すみんなに、百が慌てて続く。
「だからだめだって!君らに何かあったら、バンさんに合わせる顔なくなっちゃうよ!!」
「大丈夫です!!普通にTRIGGERを探すだけです!もしも、万が一、どうしようもなくトラブルになったら、その時はアイドルとしての基本ルールを守りましょう!」
「基本ルールって?」
「アイドル基本ルール、その1!因縁つけられても殴り掛かられるまで殴らない!その2、一般人に見られたら”撮影です!”、その3、顔だけは死守します!これだけ守ってりゃ大丈夫です!みんなだってこれ以上、TRIGGERがひどい目にあうの嫌だろ?八乙女プロの人を行かせたら、また、変な騒ぎにされるかもしれない。オレたちでやってやろうぜ!」
「……。…本当に荒っぽいことはしないんですね…?」
「ああ!心配すんな一織!」
「………不安だ……」
意気込むIDORiSH7のメンバーを見ながら、百は大きくため息をついた。
「……トラブルにならないで……バンさんに殺される……」
『大丈夫だよ。一人じゃないもん。うまくやれる!』
慰めるように言う零に、百はおそるおそる恨めし気な視線を送る。
「……ちょっと待って。うまくやれるって、まさか、零…行こうとしてないよね?」