第16章 アダムとイヴの林檎
「姉鷺さん、大丈夫ですか!?メンバーと連絡がつかないって……」
姉鷺からの電話の後、全員は慌ててTRIGGERの控室を訪れた。
紡の慌てたような声に、姉鷺ははあ、と重いため息を吐いている。
「電話も通じなくて、どこに連絡しても見つからないの。事務所、総出で捜してるんだけど…」
「三人でいなくなるのはおかしいでしょう。警察には?連絡しましたか?」
「ええ。相談させてもらったわ。連絡が取れなくなって半日くらいじゃ、動きようがないって。……っ、月雲の野郎の妨害よ!TRIGGERをステージに立たさせないつもりだわ!あの子たちに何かあったら……っ」
両手で顔を覆いながら項垂れる姉鷺の背中を、岡崎と紡が優しく撫でる。
マネージャーたちの会話を後ろで聞いていたIDORiSH7、Re:vale、零の10人は顔を見合わせた。
ツクモプロに乗り込もうという陸に、反対する一織。そんなみんなをけん制するように、百が口を開く。
「心配なのはわかるけど、ここは八乙女プロさんに任せよう。みんな、邪魔しちゃ悪いから外出てよっか。おかりん、マネ子ちゃん、カオルちゃんの傍についててあげて」
そういって、マネージャーたちを控室に残し10人は一旦外に出る。
重い空気のなか、零が俯きながらぼそりと呟いた。
『今夜の公演に出られなかったら、去年のサウンドシップの件と一緒に叩かれるよ……。警察が動くのなんて待ってたら、公演は終わっちゃう。今は警察沙汰自体デリケートなのに…。こんなの、酷過ぎるよ……TRIGGERが何をしてったいうの…』