第16章 アダムとイヴの林檎
「今日はみなさん、零さんも、一緒にお休みが取れてよかったです!」
東京国際芸術音楽祭へと向かう道中、紡が嬉しそうに言った。
IDORiSH7と零の八人はなんとかスケジュールを調整して、TRIGGERの公演を見に行けることになったのだ。
「TRIGGERの応援、してやんなきゃな!」
「うわ、零ねぇのうちわすごい!何これ!?」
『推しうちわ3セット分作ったの!陸、天のいる?』
「いるいる!やったー!!九条天推し!!」
「おお!すげー!零りん、オレも欲しい!」
『もちろん!環はどれがいい?』
「オレも、てんてんの!」
「僕もみんなの分のペンライト持ってきました!!零ちゃん、僕は十さんのを……」
「んじゃ俺は八乙女の……。おお!!あれ見ろよ!TRIGGERのロゴがペイントされた気合入った痛車が!」
大和が指差した先には、TRIGGERのロゴがド派手にペイントされた痛車がこちらに向かって走ってくるのが見えた。
『あれ……あの車……見覚えが……』
そして、その車は目の前に停まった。
「こんにちは!みなさん、お揃いですね!」
運転席から元気よく出てきたのは、岡崎だった。
『おかりん!!ちょっと、この車、リヴァ―レじゃない!?』
「はい!零ちゃんもご存じの通り……メーカーさんから頂いたスタイリッシュワゴン、リヴァ―レです!」
「TRIGGERの痛車にしたんですか!?」
驚く陸たちに、後部座席から出てきた千と百が続く。
「セレブだから」
「やっちゃった」
「OH……アメージング……素晴らしいです……!ワタシもここなの痛車欲しいです!」
「なんてことだ……ペンライトだけで臨んだ自分が恥ずかしいです…」
『私も推しうちわで浮かれてた自分が恥ずかしいです……』
「せっかくリヴァ―レと命名された車種をTRIGGERの痛車にするなんて、メーカーさんもさぞや驚きでしょうね」
唖然とするIDORiSH7のメンバーたちが痛車に群がるなか、零の元に百が駆け寄ってきた。