第3章 交錯する想い
今日一日の収録を終え、TRIGGERの三人は楽屋で束の間の休憩を取っていたところだった。
楽屋にあるテレビを見ながら、十龍之介が口を開く。
「そういえば、天、山南梢さんと仲が良いんだって?」
「……は?龍、急に何?」
「あ、いや、テレビで言ってたから」
唐突な龍の質問に、天は盛大に眉根を寄せた。
――山南梢。確か、黒川芸能事務所の最近売出し中の女性アイドルだ。何度か共演していて、顔と名前は知っている程度だったけれど。
先日の音楽番組の収録の後、スタジオ裏のモニターを見ていれば、話し掛けられた。けれど、モニターに映っていたのが、幼馴染の――零だったから。ボクは話し掛けてきた山南梢を見ようともせずに、モニターで歌う零のことを見つめていた。
モニターから目を離そうとしなかったボクに痺れを切らしたのか、彼女は言った。
「好きなんですか?」
不機嫌そうな声音。
最初に話しかけてきた猫撫で声とはずいぶん違って、なんだか可笑しかった。
「ああ、うん。彼女のファンなんだ。昔から」
ボクがそう言えば、山南梢は、随分と不機嫌そうな顔をしていた。
「九条さん、ああいう人が好きなんだ」
彼女の言い方に、少し苛立った。
ああいう人?何、その言い方。キミは零の何を知ってるの?って。だから、本当の事を言ってやった。
「そうだね。すごく好み。それじゃあ、失礼します」
「あ、待っ」
―――確か、こんなやり取りをしたのが二週間ほど前。
まさか、この時のことの仕返し?だとしたら、なんて幼稚な仕返しだろうか。ちゃんちゃら可笑しくて笑えてしまう。
天ははぁ、とため息をついてから、龍に向かって口を開いた。
「仲良いわけがないでしょう。ボクが迂闊に女の子と関わるなんて本気で思ってるの?」
「えっ……いや、思わなかったからこそ意外だったっていうか」
「天、お前昨日のNEXT Re:valeの生放送まだ見てないのかよ 」
八乙女楽が口を挟めば、天は眉間の皺を更に深く刻みながら答える。
「録画はしたけど、まだ見てない。それが何?」
「山南梢さんが、天と仲が良いって言ってたんだよ……」
「は?」
天の顔が、みるみるうちに不機嫌さを増していく。龍は苦笑しながら続けた。