第3章 交錯する想い
「ありがとうございます!すっごく嬉しい!これで芸能界のお友達"二人目"だー!」
『そんな…喜んでくれて何よりです。きっとこれからお友達たくさんできますよ』
「零さんはRe:valeの二人と仲良しですよね!私、芸能界のお友達って、"天くんしかいない"から、羨ましい」
梢の言葉に、胸がちくりと痛んだ。幼い頃、自分に向けられていた天の笑顔を思い出して、心臓がきゅっと苦しくなる。
TRIGGERは、デビューしてすぐに話題になったこともあり零の耳にもすぐに飛び込んできた。
センターで歌って踊る天を見て、驚くよりも先にやたらと納得してしまったのをよく覚えている。
それから何度かテレビ局で顔を合わせたりすることはあったけれど、簡単な挨拶だけで、必要以上に会話をすることはなかった。だって、天は一度も目を合わせてくれなかったから。
そんな天が、誰かと仲良くするのなんて意外だった。昔から必要以上に人と関わることを嫌うし、女の子なんて特にだ。テレビでは天使なんて言われてにこにこしているけれど、本当の天は毒舌で現実主義者だし、何より余計なことを嫌う。それをよく知っている零からしてみれば、他の事務所の新人アイドルの女の子と仲良くしているなんて、と不思議に思わずにはいられない。
けれど、天だってアイドルの前に一人の男の子だ。それに、自分が知っているのは幼い頃の天だけ。今の天のことは、何も知らない。
会わない間に天も色々と変わったのだろう、と納得しながらもどこか寂しい気持ちを抑えつつ零は続けた。
『いやいや、私だって全然お友達いないですよ。Re:valeさんは、同じ番組やらせてもらってるから気にかけてもらってるだけで』
「そうなんですか?あ、零さん、今度よかったらお茶しません?女子会したいなあって!」
『あ、はい!ご都合あえばぜひ!』
零がそう返せば、遠くから百たちが自分の名前を呼ぶ声がした。
『ごめんなさい、そろそろ失礼します。今日はありがとうございました!』
「こちらこそ!女子会、楽しみにしてまーす」
梢の言葉に、零は急いで荷物を取って百と千の元へと駆けて行った。
梢はその背中を、見えなくなるまでずっと見つめていた。