第16章 アダムとイヴの林檎
「お疲れ様でーす……」
「お疲れさま!どうしたの?」
「ちょっと早いけど、三人に挨拶に…。九州の方に異動が決まっちゃってさ。番組からは降りることになった」
彼の言葉に、三人は目を見開いた。
「……好きな番組だったから、もっと、やっていたかったけどね……。落ち着いたら、また野球誘ってよ、百ちゃん、零ちゃん」
「………」
『そんな……なんで……っ』
「僕から掛けあうよ。あなたにいなくなられたら困る」
『私も…!!最初からずっと一緒に番組作ってきたじゃないですか……そんなこと…』
「その言葉だけで十分だよ。これからも、三人で頑張って。みんなを楽しませてくれ」
百が顔を歪めながら、震える口を開く。
「……なんでだよ……オレの悪口言ってっつったじゃん……」
「あはは。言えないよ。百ちゃん、悪いとこなんかないもん。TRIGGERにだって、悪いとこはない。彼等ほど真面目なタレントはいないよ。うちにゲストに来てくれたときだって、スタッフがやりやすいように配慮してくれた。すごい、いい回だったよ。そうだろ?」
「……っ、……うぅ……」
『……っ……やだ…っ』
「二人とも、泣かないで。僕は、面白いものを作りたいんだ。そのために嘘はつかない。つかなかった。納得してる。だから、ほら、顔をあげて」
彼の優しい言葉に、百がごしごしと涙を擦ってから続けた。
「……っ、必ず、中央に連れ戻す。それまで、泥を食っても、ここに立ってる。約束する……」
「困ったことがあったら、なんでも言ってくれ。あなたを助けられる僕たちでいる」
『……必ず、またここで、一緒に仕事しましょう…。約束です』
「うん……。ありがとう。Re:valeと、零ちゃんと。君達三人と一緒に仕事ができたこと、誇りに思うよ。……百ちゃん、千くん、零ちゃん、頑張ってね」
その言葉を最後に、バタン、と扉が閉まる。
「……零、モモ、大丈夫か?」
『……もう、我慢できないよ』
「………。そろそろキレそう…」
「僕も」