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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第16章 アダムとイヴの林檎




「うわ……!こんなにたくさん…いいんですか?」

「おお、すげえ!これ、行列で買えないやつじゃん!」

「今日、別スタジオでラジオの収録でさ。早く終わったから、デパ地下回って、美味しそうなヤツ買い尽くしてきたっ!食べて食べて!」

「……ありがとうございます……本当に…」


泣きそうな龍之介を、よしよしと慰める楽。


「TRIGGERのお客さん、たくさん来てたよ。ファンの子たちは、みんな3人を待ってる」

「大丈夫、君たちを知っている人は、ちゃんとわかってるよ」


百と千の温かい言葉に、深々と頭を下げる三人。
零が手にもっていたお菓子を渡せば、顔をあげた天と目が合った。


「……零……」

『天……。TRIGGERが伝えてきたものは、どこにも消えてなんかないよ。天も、楽も、龍も、そういう仕事をしてきた。胸を張って、顔をあげて?』


零の言葉に、天は優しく微笑んだ。


「そうだね。過去の自分たちに、笑われることのないように。今すべきことはそれだけだ」

「ああ」

「そうだな」


楽と龍の返事に、百と千が続けてエールを送る。楽屋へとお菓子を運んでいれば、天が零の背中をつん、と小突いた。
振り返ってみれば、優しげに目を細めている天がいて。


「……零、来てくれてありがとう。元気出たよ」




そういって、天は笑った。





―――どうしてだろう。

そのときの天の笑顔が、今にも消えてしまいそうなくらい儚く見えたんだ。





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