第16章 アダムとイヴの林檎
「――今朝のニュース見たか?黒幕は八乙女社長だったのかな?すげえな」
「――いや、でも、ちょっと露骨じゃないか?八乙女プロ叩き…。なんか陰でやらかしたのかな」
「おはようございます。よろしくお願いします」
こそこそと噂話をしていたスタッフたちを遮るように、姉鷺が挨拶してみせた。
スタッフたちは気まずそうに挨拶してから、そそくさと逃げるように去っていく。
「あんたたち、挨拶以外、何も言わなくていいから」
姉鷺の言葉に、TRIGGERの三人が小さく頷く。三人の表情は暗く沈んでいた。
「顔をあげなさい!……あ、下岡さん!おはようございます。本日はよろしくお願いします」
横を通った下岡に、姉鷺が挨拶すれば。
「………。ああ……。おはよう。よろしく頼むよ……」
あきらかに元気のない挨拶を返す下岡の背中を心配そうに見つめながら、TRIGGERの三人は控室へと入る。元気のない三人を心配して、収録が一緒だったIDORiSH7のメンバー達が慰めにきてくれた。
「ボクらの潔白は、ボクらが証明する。ステージの上で。今、一番不安なのはファンだ。ボクらを信じていいのか戸惑ってる。しっかりと、前を見て応えよう」
天の言葉と共に、三人が控室の扉を開ければ。
『あ……!』
そこには、零とRe:valeの二人が立っていて。
「よかったよかった!間に合ったー!」
「差し入れ、持ってきたよ」
『こういう時は、糖分、糖分!』
三人の手には、有名なスイーツ屋さんの紙袋がたくさんぶらさがっていた。