第16章 アダムとイヴの林檎
翌朝――。
小鳥遊事務所では、慌てた様子で社長室に入ってきた万理が、音晴にタブレットを見せた。
「社長!見てください、このニュース……」
「え……?……八乙女くんが、花巻さんと、ホテルで密会……?」
「どこのニュースもそればかりです。あわせて、八乙女事務所に所属してる女性タレントの評判も下がっています。取り上げ方が異常ですよ!確固とした事実は、花巻さんがツクモを辞めたがっていたことだけなのに。十くんの仲介での移籍も、天くんと零ちゃんや八乙女社長と花巻さんの親密な関係も、全部あったことのように話してる!こんなの、マスメディアを通した洗脳と同じじゃないですか!」
「……八乙女くん……」
かつての同僚を心配する音晴の声が、社長室に小さく木霊した。