第16章 アダムとイヴの林檎
「…わかった。そう言ってくれて嬉しいよ、天。やっぱり、僕には君だけだ。君は僕の創った完璧なアイドルだ。ゼロ以上の理想のスターだよ。君だけが最高のアイドルの条件を満たしている。零と千もそうだと思ったけど、あの子たちは一度ぶれてしまったからね」
「……最高のアイドルの条件?」
「天なら、わかるはずだ。だって、僕に出会う前から君は、その素質を持っていた。処女受胎で生まれた救世主みたいにね」
「………」
―――零。
ボクの選択は、正しかったんだね。
あの日のことを、今まで何度も後悔してきた。けれど、今やっと。後悔する必要なんてなかったんだ、ってそう思えるよ。
あの時キミがボクの手を掴んでいたら。
あの時ボクが無理矢理にでもキミの手を引いていたら。
キミの人生を台無しにしていたかもしれない――そんなこと、想像するだけで背筋が凍るようだった。
もう、後悔なんてしないよ。
これで、よかったんだよね?
ボクはちゃんと、キミのヒーローになれたのかな―――?