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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第16章 アダムとイヴの林檎




「おはよう、モモ」


言いながら千が控室のドアを開ければ、机の上にだらん、と項垂れていた百が慌てて飛び起きた。


「……ユキっ!…っおはよー!今日もイケメンだね!」

「………」


明らかに落ち込んでいたのをごまかす様子の百に、千ははあ、と小さくため息を吐いた。


「…週刊誌なんて信じてるのか?」

「………え?なんのこと?」

「とぼけても無駄だ。バレバレだよ、モモ」

「……あはは……」


千の言葉に百は苦笑してから、口を開いた。


「……落ち込んでないっていったら嘘になるよ。……でもさ、オレ、零が幸せならそれでいいって思えるんだ。天は本当にいい子だよ。オレも天のこと大好きだもん。大好きな二人が幸せになってくれたら、こんなハッピーなことってないじゃん」


百の言葉に、千が続ける。


「自分の気持ちを押し殺してでも、そう思えるのか?」

「……うん。オレの幸せってなんだろう?って考えたときに、零が幸せでいることなんだって、素直にそう思えた」

「………」

「本当だよ。零の幸せが、オレの幸せなんだ。本当に人を好きになることって、こういうことなんだなって思った。……零は本当に、オレにとっての初めてがいっぱいだよ」


百はそういってから、目を細めて嬉しそうに、だけどどこか寂しそうに笑った。


「……零がそう言ったの?天くんといるのが幸せだって」

「言ってないよ。でも、わかるもん」

「またそれか。モモ、おまえはこのままで本当にいいのか。運動部だって、元はといえば――」



千がそう言いかけたとき、控室の扉がノックの音と共に開いた。


「Re:veleさん、そろそろお願いします!」


スタッフの声に返事をしてから、千は心配そうに百を見やる。百はそんな千の気持ちを汲み取ったのか、安心させるように笑ってみせた。


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