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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第16章 アダムとイヴの林檎




「――零さん、お疲れ様ですっ!」


そんなことを考えていれば、慌てて事務所に出社した紡から声が掛かる。


『紡ちゃん……』

「心配で駆けつけてきました……!これ…あきらかに隠し撮りじゃないですか……。訴えることはできないんですか…?」


そういう紡に、万理が答える。


「紡さん、おはよう。抗議文は勿論送ったよ。でも、報道の自由に基づいて訴訟は難しいんだ。いくら共演者やスタッフの中だけに絞ったとしても、人物を特定するのは至難の業だしね。特定できたとしたって、なんとしてでも事務所側が揉み消すだろう。証拠なんてとっくに消されててまず出てこない。でも、単独犯の可能性は低いよ。写真を撮るタイミングも、場所も、全部しっかり計算されてる……初めからこうなることがわかってたみたいに」

『………』


肩を落とす零の背中を紡が優しく撫でる。


「それにしても、ここ最近の報道に違和感を感じます……あからさまな叩き方にも…。十さんの次は天さん……それに」

『…それに?』

「先日、楽さんから言われたんです。最近、私と楽さんを噂させようとしている人が多い、と。私も感じてたんです……。だから、しばらく連絡取るのも、話しかけるのも控える、って……」


紡の話に、零は目を見開いた。


―――月雲了の狙いは・・・TRIGGER?


胸騒ぎがする。なんだか、とても良くないことが起こるような、嫌な予感に背筋が凍る。その時、ポケットの中の携帯電話が鳴った。

慌てて画面を見てみれば、天の名前が表示されていて。紡と万理に一言いってから、応接間を出て電話に出る。


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