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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第16章 アダムとイヴの林檎



天の優しい言葉に、花巻は拳をぎゅっと握りしめてから、小さく震える口を開いた。


「……プライドがないのは、天くんたちの方でしょ。私、十さんと付き合ってるの。十さんに誘われてツクモを辞めたの。なのに、八乙女事務所に誘ってくれない。女一人助けてくれないなんて、格好悪い男たち。週刊誌に書かれてる通り、十さんも、あなたたちも無責任に私の人生をめちゃくちゃにしたの」


大和は小さくため息を吐いてから、天に言う。


「……九条、無理だ。変わっちまったよ、彼女は」

「……残念だ、花巻さん」

「……負け惜しみはやめて。私は幸せになるんだから。最高の人と」


花巻の言う”最高の人”という言葉に引っかかる大和。
それをごまかすように、花巻は席を立った。


「……帰るわ。天くん、あなたも他人の心配してる場合じゃないんじゃない?」

「どういう意味?」

「……直にわかるわ。ごちそうさま」


そういって、彼女はバーを去っていた。


花巻すみれとの直談判は決裂。楽たちの直接月雲了に龍をはめたことを吐かせる作戦も、失敗に終わった。



深まる夜の闇の中、狂い始めていた歯車が、音を立てて擦れていく――。


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