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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第16章 アダムとイヴの林檎





「こんばんは」



待ち合わせをしていたバーで、大和が花巻に声を掛ける。
花巻はどこか気まずそうに、小さく返事をした。


「こんばんは……」

「マンツーマンは怖いからさ。こっちは一人呼ばせてもらったよ」

「どうも。龍がお世話になったみたいで」


大和の後ろから現れた天に、花巻は睫毛を伏せる。
そんな花巻に困ったように眉を下げながら、大和が続けた。


「変な噂が立ったら困るし、悪いけど録音させてもらうね」
  
「私に何を喋らせたいの?録音しても無駄よ。あなたたちが困ることしか話さないから」

「俺たちが困ること?」

「大和さん。千葉さんの息子さんなんだってね」

「………」

「だからすぐに主演になったんだ。贔屓されてていいね。でも、お母さんが可哀想だと思わないの?それとも、大和さんも愛人作るの?なってあげようか?愛人」

「……安い女になっちまったな。どうしてそうなっちまったんだ?」

「愛人の息子よりましじゃない?ファンの子はがっかりするでしょうね。ねえ、まだ、私と喋りたい?もっと、すごいこと知って――」


花巻の言葉を遮るように、天が口を開いた。


「言ってみなよ」

「………」

「どうぞ」

「…天くんのことも知ってるよ。天くん、あの零さんと幼馴染なんだってね!あの連ドラの共演だってプロデューサーの横暴なごり押しだったんでしょ?」

「………。……ボクも、キミのことを知ってるよ。キミは最高のシンガーだ。汚い言葉を使わなくても、キミの歌がキミの魅力を守り続ける」

「……天くん……」

「何を怖がってるの?いつもの優しい顔に戻って。キミのプライドを奪う者こそ、キミを尊敬してない、キミの敵だよ」

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