第16章 アダムとイヴの林檎
テレビのニュースでは、早速龍之介と花巻すみれの熱愛報道が流れていた。
【本日、TRIGGERの十龍之介さんと、花巻すみれさんの交際について、週刊誌が最新ニュースをスクープしました】
記者が慌てた様子でカメラと共に、龍之介にマイクを向ける。
【十さん、花巻さんを八乙女プロに誘ったという話は本当ですか?彼女と特別親しくなったのはいつ頃だったのでしょうか?】
「……すみません、お答えできません」
「通してちょうだい!龍、急いで!」
フラッシュが飛び交うなか、大勢の記者たちを避けるようにして進んでいく龍之介と姉鷺の姿が、何度もテレビに映されていた。
街中では、龍之介が付き合っている花巻を強引に引き抜いた、ブラホワでライバルになりそうだから色仕掛けをした、など、一方的に龍之介が叩かれている様子。
「……ごめん……。こんなことになるなんて……」
TRIGGERの控室で、龍之介は落ち込んだように言った。
「龍は何も悪くないだろ。インタビューだって丁寧に断ってる。いつも通りの対応をしてるんだろ!?」
楽のフォローに、龍之介は元気のない様子で続く。
「……ああ。でも、今回、何か雰囲気が違うんだ。インタビュアーが攻撃的なんだ」
「……記者も攻撃的だった…。今まで色々言われてきたことはあるが、こんな露骨なのは初めてだ」
そんな龍の言葉に、楽も考えるように口を噤んだ。
最近、楽も自分の周りで気になっていることが一つあった。IDORiSH7のマネージャーである小鳥遊紡と楽の関係を囁く噂が、露骨に蔓延っているのだ。紡との場をセッティングしようとしてくる者も出てくる始末で、楽はこのタイミングを不審に思っていた。
そんな時、控室の扉がノックの音と共にガチャリ、と開いた。