第16章 アダムとイヴの林檎
「……花巻すみれがうちに移籍!?」
Re:valeの二人を帰したあと、静かになったはずの八乙女事務所の社長室で八乙女の声が大きく響いた。
「はい……」
「あんな爆弾娘と契約できるか!すぐに活動させれば業界からは睨まれ、活動を控えさせればファンの反感を買う。ツクモめ、老体のくせに思い上がった結果だ。彼女は今どこにいる?」
八乙女が訊ねれば、姉鷺が顔を歪めながら続く。
「帰しました。うちと契約しない以上、事務所に置いておくわけにもいきませんし」
「ただ帰したのか!?龍之介に妙なアクションを取ったんだろう。誰かに動向を見張らせておけ!」
「……っ社長、大変です!」
姉鷺が慌てた様子で、ノートパソコンを八乙女に見せた。
「ツクモプロから八乙女プロに移籍が決定しそうだ、と彼女が自身のブログで発表しました!」
「……ふざけるな…!……っ、龍之介の名前は!?」
「あります。協力してくださった十龍之介さんに心から感謝……」
「……故意に、移籍問題にうちと龍之介を巻き込むつもりか!?」
罠の花が、一枚、そしてまた一枚、と散っていく。