第16章 アダムとイヴの林檎
「………」
「……勘違いではないかもしれないな。おまえは信用できる人間を選別してきた。Re:valeはバックアップがないからな」
八乙女の言葉に、百は考えるように顎に手を添えながら口を開いた。
「……目をつけられるにはまだ早い。あれはただのコミュニティだ。でも……。自分に抵抗する可能性のある団体だと勘違いしてるなら、八乙女さんの中では、龍ちゃんが危ない」
「運動部に誘ったのか」
「誘った。幹事も任せた」
「余計なことを……!」
「だって、龍ちゃん気が利くんだもん!」
「知るか!!ふん、まあいい。ツクモに以前のような力はない。これを機に袂を分かってやる。今の八乙女プロ、今のTRIGGERの勢いなら、ツクモと十分、勝負ができるだろう」
そんな八乙女に、百が眉根を寄せる。
「今までのツクモと一緒にしたら、痛い目見るよ。了さんはああ見えて頭が切れる人だ」
「ただの礼儀を知らない若造だ。いざとなれば、おまえの運動部を本物の千葉サロンにして抵抗させればいい」
「……モモの友達を、兵隊みたいに言うのはやめてくれない?パパのこと嫌いじゃないけど、自分さえよければいいっていう考えはやめた方がいいよ」
千の言葉に、八乙女は皮肉めいた言い方で続けた。
「おまえに言われたくないぞ」
「ひどいな!ユキはジェントルだよ!ユキの言ったことは、オレも思ってたよ。……それに、あの運動部を作ったのには理由があるんだ。そんな風に言われるのはオレも良い気はしない。それに、それぞれ立場は違っても、みんな協力して同じものを作る仲間でしょう。いつか、自分に返ってくるよ。そのとき、苦労するのはTRIGGERやパパのところのタレントさんたちだよ」
そういった百を一瞥してから、八乙女はふん、と鼻で笑う。
「……確固たる力を示せば、私の足元に縋りに来る。こちらから姿勢を低くする必要はない。Re:vale、お前らに対してもだ。TRIGGERはRe:valeを超え、八乙女事務所はツクモを超えて、日本一になる。やり方を変えるつもりはない」