第3章 交錯する想い
零は、真っ直ぐにこちらを射抜く梢の瞳を見ながら、こくり、と息を飲んだ。
九条天。
大人気アイドルグループTRIGGERのセンター。憧れている人の話題で、その名前が出てくることは決して不自然ではないし、むしろどこにいたってそこら中で耳に入ってくる。
けれど梢の言い方は、なんだかまるで零に向けて言っているような、こちらの反応を伺っているような、そんな様子だった。
「えー!天に憧れてるんだ!そこはオレかユキって言って欲しかったよー!ねえ、ユキ、零!」
「そうね」
「あはは、ごめんなさい!」
『………』
百の突っ込みにあはは、と笑いながらも、梢は零から目を逸らさない。楽屋に挨拶しに来たふわふわした印象とは打って変わって、どこか鋭い眼差しだった。
「?零?もしもーし!」
『えっ、あ、ごめん』
「どうしたの、ボーッとして!まさかまた今日の夜ご飯のこと考えてた?」
『……そうそう、今日、寝坊してお昼ご飯たべれなかったからお腹すいちゃって!』
「あはは、相変わらず食いしん坊なんだから!」
「そんなことだろうと思った。終わったら僕の家に来なよ。スペシャルプレートをご馳走してあげよう」
『えー……千ちゃんのご飯は野菜しか出てこないから嫌』
きゃあああ!と客席から歓声があがる。
百と千のアシストで、なんとかその場を乗り切った零がちらり、と梢を見やれば、再び目が合った。
そして彼女は、にっこりと笑ってから、口を開く。
「天くんとは年も近くて、話も合うんです。好きなアーティストとかも同じで」
「へえ!天と仲良いんだ?珍しいねー、天が女の子と話すなんて!」
「そうね。女の子どころか、僕たちに心を開いてくれるのにも時間かかったしね」
「あはは!確かに!」
その後も当たり障りのない話題が続いていく。
梢の視線が気になる気はしたが、考えすぎだと雑念を振り払い、零はMCを進めていく。IDORiSH7のweb番組の宣伝も、うまく百と千が話題を広げてくれて大成功。
最後に山南梢が新曲を披露して、本日のNEXT Re:valeの収録は無事終了した。