第15章 明日もキミに恋をする
『おはよ、天』
ウエディングドレス姿の、零が言った。
――確かに今日挨拶を交わすのは初めてだけれど、お互いこんな格好で向き合いながら”おはよう”だなんて。零の花嫁姿があまりに綺麗だったから、さっきまでどきどきして緊張して目を合わせられずにいた自分が馬鹿らしく思えて、同時になんだか可笑しくて、つい笑みが零れてしまう。
「ふふ、おはよう。……今日で、最後だね」
『そうだね。ちょっと、寂しいな』
―――絶対、ボクの方が寂しいよ。そう言ってやりたくなる気持ちを抑えて、無理に笑ってみせた。
もう、理由もなくキミに触れる事も、好きだと囁く事も、抱き締める事も――このドラマの撮影が終われば、二度となくなってしまうのかと思うと
どうしようもなく胸が締め付けられる。
「……今日は随分、余裕そうだね」
『え?』
「初日はあんなに緊張してたくせに」
『最初はそりゃ……緊張したよっ。でもね、今は、相手役が天で本当に良かったな、って、思うんだ』
「………なんで?」
『小さい頃の、天と私の夢を、叶えてあげられた気がして』
零の言葉に、心臓がとくりと音を立てた。
『あ、でも……さすがにキスシーンは、緊張してるよ!?』
慌ててそう言う零に、心臓がきりきりと痛む。
―――ボクは今でも、キミとの約束を夢見てるっていうのに。
そんなボクの気も知らずに、キミは勝手にどんどん前へ進んでいく。
ボクのことを、綺麗な思い出のままアルバムの中に仕舞うように。