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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第15章 明日もキミに恋をする




そんなことを思いながら、控室を出れば。丁度、控室から出てきた天と目が合った。彼は白いタキシードに身を包んでいて、なんだか絵本の中の王子様みたいだった。

天は驚いたように目を見開いてから、やがて優しく微笑んだ。
そんな天の笑顔にどうしようもなく嬉しくなって、目一杯の笑顔を返す。すると天は、眉根を寄せてから、ぷいっとそっぽを向いてしまった。


『あれ……』

「――零ちゃん、今日はよろしくね!」


後ろから掛かった声に振り向けば、そこには監督が立っていて。


『監督!よろしくお願いします!』

「ウエディングドレス姿、ばっちり決まってるよ!本当に、この作品を零ちゃんと天くんとやれてよかった。急遽天くんに変更になった時はどうなるかと思ったけど、変更になって今はよかったと思ってるよ。最高の作品を作ってくれてありがとう」

『それはこちらの台詞です……。監督と一緒にこの作品に携われた事、とても光栄に思います。一生忘れません』

「そう言ってくれると嬉しいねえ。そういえば、零ちゃんと天くんって、本当の幼馴染なんだって?」

『………え?』

「どうりで、演技の幅を超えてるな、と思わせられたわけだ!あはは、やられたよ!プロデューサー側からのサプライズってやつかな!」


監督の言葉に、目を見開く。
幼馴染だという事は、一切公表していないはずだ。気持ち悪い違和感が胸を支配する。


『……。……そういえば、どうして急にキャスティングの変更があったんですか?』

「え?ああ、当初はツクモプロのとある俳優さんに決まってたんだよ。けど、急遽彼が降りると言いだしてね。通常ならありえない話なんだけど、なんでもプロデューサーが九条天くんをごり押ししたそうだよ」

『………』


監督の言葉に、零は思わず口元を歪めた。

ツクモプロ――まさか、あの月雲了がまた、何かを企んでいる?

嫌な考えが脳裏を過る。けれど、今は目の前の仕事に集中しなくては。


零は雑念を振り払うように首を振って、顔を上げた。



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