第15章 明日もキミに恋をする
そんなことを思いながら、控室を出れば。丁度、控室から出てきた天と目が合った。彼は白いタキシードに身を包んでいて、なんだか絵本の中の王子様みたいだった。
天は驚いたように目を見開いてから、やがて優しく微笑んだ。
そんな天の笑顔にどうしようもなく嬉しくなって、目一杯の笑顔を返す。すると天は、眉根を寄せてから、ぷいっとそっぽを向いてしまった。
『あれ……』
「――零ちゃん、今日はよろしくね!」
後ろから掛かった声に振り向けば、そこには監督が立っていて。
『監督!よろしくお願いします!』
「ウエディングドレス姿、ばっちり決まってるよ!本当に、この作品を零ちゃんと天くんとやれてよかった。急遽天くんに変更になった時はどうなるかと思ったけど、変更になって今はよかったと思ってるよ。最高の作品を作ってくれてありがとう」
『それはこちらの台詞です……。監督と一緒にこの作品に携われた事、とても光栄に思います。一生忘れません』
「そう言ってくれると嬉しいねえ。そういえば、零ちゃんと天くんって、本当の幼馴染なんだって?」
『………え?』
「どうりで、演技の幅を超えてるな、と思わせられたわけだ!あはは、やられたよ!プロデューサー側からのサプライズってやつかな!」
監督の言葉に、目を見開く。
幼馴染だという事は、一切公表していないはずだ。気持ち悪い違和感が胸を支配する。
『……。……そういえば、どうして急にキャスティングの変更があったんですか?』
「え?ああ、当初はツクモプロのとある俳優さんに決まってたんだよ。けど、急遽彼が降りると言いだしてね。通常ならありえない話なんだけど、なんでもプロデューサーが九条天くんをごり押ししたそうだよ」
『………』
監督の言葉に、零は思わず口元を歪めた。
ツクモプロ――まさか、あの月雲了がまた、何かを企んでいる?
嫌な考えが脳裏を過る。けれど、今は目の前の仕事に集中しなくては。
零は雑念を振り払うように首を振って、顔を上げた。