第15章 明日もキミに恋をする
水のように澄み切った、秋の空が広がっていた。
雲一つない秋晴れの空を見上げながら、零が呟くように言った。
『……今日で最後、か』
ぽつり、と溢した独り言に、隣にいた万理が微笑んだ。
「寂しくなるね」
『はい』
今日は、ドラマ”明日も君に恋をする”のクランクアップの日。
最後のワンシーンを撮って、長いようで短かった三か月が終わる。
達成感と同時に、どこか寂しさが胸を襲う。
―――始めは、不安だらけだったけれど。
やっぱり天との撮影は楽しくて、再会してからもずっと距離を感じていたせいか、このドラマのお陰でようやく距離が縮まったような気がしていた。
願うなら。
昔のように、また――天と笑い合える日がくればいいな、と思う。
大切な大切な、幼馴染として。
「なんか、俺まで緊張してきた」
万理が苦笑しながら言った。
『なんで万理さんが緊張するんですか!』
「だって……結婚式のシーンだよ?いくら撮影といえど、大切な我が子を送り出すみたいで……」
『あはは、万理さん、お父さんって年齢じゃないでしょ!』
笑い合いながら今日のロケ地である教会の中に入れば、既にスタッフが忙しく駆け回っていた。
万理に見送られて、メイク室に入る。一時間に渡り丁寧にメイクを施されてから、純白のウエディングドレスに袖を通した。
広告の媒体の撮影やドレスブランドのモデルとしてウエディングドレスを着たことは今まで何度かあったけれど、ドラマで着るのは初めてだし、相手役がいるのも初めてだった。
けれど、不思議と緊張はしていなかった。
始めは、相手が天だから――緊張もしていたし、どきどきもしていた。
でも、今は。
相手が天だから――安心して、どこか心が穏やかな、そんな気分だった。
それはきっとあの日、天に今までの気持ちを嘘偽りなく話すことができたからだと思う。