第14章 追憶の幻想曲
「あれ?陸くん、どうしたの?」
「大和さんたちが連れてきた子が、肝試し協力してくれるって!」
陸は入院生活が長かったため、霊と会話が出来るらしい。
「首筋に息を吹きかけたりできるみたいです!」
「わっ!本当だ!?寒気が…!」
「さすがだな……すみません、お礼もできませんで」
「お礼はカレーでいいって!」
「今もこちらにいらっしゃるの?」
「今はお風呂場で肝試しの予行練習してくるって」
そして、お風呂場からは次々と悲鳴が聞こえてくる。
「ぎゃあああああ!?」
「わああああ……!!」
「いきなり電気が消えて水が出た!?」
「誰かに足を踏まれたんですけど!?」
楽と一織の悲鳴に、壮五と龍之介は顔を見合わせた。
「凄腕だ」
「本物の仕事は一味違いますね」
関心している二人の横で、環が涙目になりながら零の後ろに張り付いている。
「もうやだ!うち帰る!だから肝試しやだっつったじゃん!零りん~~」
『嫌がってる子がいるんだから、いじめちゃ駄目でしょ?』
「ううっ……優しいの零りんだけだよ……」
そんな環に、壮五が宙吊りになったまま申し訳なさそうに口を開いた。
「ごめんね。張り切りすぎちゃって…」
「うるせえ!逆さ吊りになってんじゃねえ!うっ、うっ……」
『よしよし。男の子なんだから、泣かないよ、大丈夫』
ぎゃあぎゃあ騒いでいる声を聞きつけた天が、眉根を寄せながら陸に問う。
「陸、その子はまだいるの?」
「うん」
「もう遅いから帰ってもらいなさい」
「帰りたくないって」
「だめだよ。ボクらは住む世界が違うんだから。ずっと一緒にはいられないんだ」
「………」
「ありがとうって伝えて。ちゃんと礼儀正しくお別れして」
「最後に歌聴きたいって。ゼロのファンだったって言ってる」
「いいよ。ゼロの歌を歌ってあげる。―――今夜はありがとう」