第14章 追憶の幻想曲
「………何してるんですか」
「うわあっ!?!?」
驚き振り返ってみれば、そこには両腕を組んで怪訝な視線を投げかけている天が立っていた。
「て、天……!?」
「………」
天の突き刺さるような視線が痛い。
まさか、一部始終を見られていたのかと思うと死にたくなった。
「………み…見てた?」
「………見てました。”零のばか…”辺りから」
「それ、最初からじゃん!!」
うわあああ…と声にならない叫びをあげながら頭を抱えて項垂れる百。
天ははあ、とため息を吐いてから、隅に置いてある布団に手をかけた。
「布団敷くんでしょう。手伝います」
「あ……ありがとう……」
せっせと布団を敷いてから、百が零を抱き上げそっと布団の上に寝かす。天が掛け布団をかけてやれば、零が気持ちよさそうに寝返りを打った。
そんな彼女を見つめながら、天が小さく口を開く。
「………わかりますよ」
「え?」
「百さんの気持ち。ムカつきますよね」
天の言葉に、百はきょとん、としてから、あははと声をあげて笑った。
「うんうん、ムカつくよね!可愛すぎて!」
「人の気も知らないで、って言いたくなりますよね」
「本っ当それ!!」
「無防備すぎるんですよ。女性としての自覚が足りなすぎっていうか」
「わかる…っ!もっと、自分がどれだけ可愛いか自覚して!?って感じ!」
「それに加えて抜けてるし、平気で恥ずかしいこと言ってくる」
「そうそう。それも無自覚なところとか、もういい加減にして!って思うよね!」
盛大に愚痴を言い合ってから、百と天は顔を見合わせて、ぷっと吹き出した。
「あははっ……零あるある……っ、こんな話、天としかできないよっ」
「ぷっ……そうですね、百さんとしか、できないです」
ひとしきり笑い合ってから、天が百の名前を呼んだ。
「……百さん」
「うん?」
「零のこと、よろしくお願いします」
「……え?」
天の言葉に、百は目を見開いてから慌てて続ける。
「待って、天。それは――」
「可愛い後輩の頼み、先輩なら聞いてくれますよね」
百の言葉を遮るように言ってから、天は優しく微笑んだ。
その時、勢いよく襖が開いた。