第14章 追憶の幻想曲
「”使える話をしてください”だって……」
「やべえ。オレらが飲んでる間、未成年組が暇すぎてだるまさんが転んだはじめてる」
三月が顔を歪ませていれば、百が口を開いた。
「よし、ちゃんとやろう!ちょっと一旦、零を隣の部屋で寝かしてくるから待ってて!」
「零ちゃん起こさないんですか!?」
「大丈夫大丈夫!その辺は鍛えてあるから!30分寝れば復活する。普段もやばくなったら、30分トイレで寝かすの!ちゃんとオレと同じで、一晩で三回リセットできる体に仕上げてあるから!」
「すごいな……」
心配する三月たちを背に百はひょい、と零を抱きかかえて、撮影班に録らないよう注意してから、そのまま布団が置いてある部屋へと移動した。
部屋の襖を開けて、とりあえず布団を敷こうと零を畳の上にそっと寝かせる。
静かな寝息を立てて気持ちよさそうに眠る零の寝顔を見つめながら、百はぷにっと零の頬っぺたを摘まんでみた。
「……零のばか」
小さく呟いてみれば、零はくすぐったそうに身じろぎした。可愛いすぎて、なんだか憎たらしくさえ思えてくる。
みんなの前でこんな無防備な寝顔を見せやがって、なんてヤキモチを妬いている反面、酔ったからといって抱き着いてくるなんて可愛すぎるにもほどがある、なんて喜んでる自分もいたりして。
―――オレの決心を、こうやって簡単に揺るがそうとして来る。ただでさえ、顔を見るたび、声を聞くたび、抱き締めたくて、触れたくて、たまらなくなるっていうのに。どれだけ我慢してると思ってるの?
零はずるいよ、本当に。
「……このっ……こうしてやる……っ!」
零の白い頬を、ぶにーっと両手で引っ張った。びろーんと顔が伸びて、可愛い寝顔が途端に間抜けな顔になる。けれど。
「……くそっ……どうやってもぶさいくにならない……」
酔った零は、なかなか起きないのだ。それをいいことに、ぶつぶつと独り言を呟きながら白い頬っぺたをびよんびよんと伸ばしてあの手この手で変顔をさせようとしていれば。
ふと、後ろから声がした。