第14章 追憶の幻想曲
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「一生、忘れることなんてないだろうね。オレにとって、零との出会いは、人生の初めてがいっぱい詰まった、そんな出会いだったから」
百は言ってから、困ったように笑った。
そんな百に千が続く。
「モモが曲やMVのことに口を出すことなんて今までなかったから、驚いたよ。でも、僕もしっくりきたんだ。ああ、この曲にぴったりだって。長いこと煮詰まってたのが嘘みたいに、百と零の二人を見ていたら、どんどん歌詞が浮かんできた」
「じゃあ……それが――」
「”TO MY DEAREST”――あの曲は、零とモモのために作ったような曲なんだ」
千の言葉に、話を聞いていたメンバーたちから喝采が起こる。
「すっげえ!!なにそれ、ドラマじゃん!!」
「実写化した方がいいっすよ、それ!!」
「マジか…あの曲の歌詞にはそんな意味が……」
「こんな裏話が聞けるなんて……僕、今日ここに来てよかったです……」
全力で興奮する男たちに、零は照れ臭いのをごまかすように酒を流し込んだ。
『や、やめてよ、恥ずかしいな……!!』
「それにしても、零が僕たちに気を許してくれるまで大変だったよね。本当にこの子アイドルとしてやっていけるの?ってくらい人見知りだったし。目を合わせてもらうまで一ヶ月かかった」
「そうそう!ぼそぼそ喋ってて何言ってるかわっかんないし、え、なに?って耳を近づければ、顔真っ赤にしてどっかいっちゃうし」
『ちょっと!!それ出会いに関係ないじゃん!!』
零の突っ込みも虚しく、百と千は昔を懐かしむように続ける。
「仲良くなるまでめちゃくちゃ時間かかったよね!」
「そうね。半年くらい?」
「確かに零ちゃん、俺たちの寮に初めて来たときも、人見知り全開だったよなー。そこまでじゃねぇけど」
「オレたちが鍛えたんだよ!バラエティも歌番組もセットで出れるようにおかりんが動いてくれさ」
「その甲斐あってか、NEXT Re:valeが決まった時は本当に嬉しかったよね。その時、モモと零なんて泣いて喜んでさ」
しばらく思い出話に花を咲かせていれば、ふと、零の体がぐらん、と揺れる。
そしてそのまま、百の肩に顔をこつん、と預けた。