第14章 追憶の幻想曲
―――Re:valeを結成して、二年目に差し掛かった秋だった。
「百くん、千くん、お疲れ様です!」
歌番組の収録を終え、スタジオの廊下を歩きながらおかりんが言った。
「番組プロデューサーさんが、お二人のこと褒めてましたよ!さすがです。お二人とも、今、乗りに乗ってますね!冬に向けてRe:vale初のクリスマスソングのデモも千くんがあげてくれましたし、目指すはブラックオアホワイト、総合優勝です!」
「あはは、おかりん、気が早いよー!でもさ、あの曲、めちゃくちゃいい曲だよね!さすがユキ!天才!イケメン!」
「……でも、イマイチまだ歌詞がしっくり来てないんだよね」
「そうなんですか?自分は今のままでも十分素敵だと思いますけど!」
「もう少し現実味が欲しいんだよね。……モモ、なんかいい案ない?」
そんな話をしていた時だった。
視界の端に、一人の女の子の姿が映って。
こちらの視線に気づいたのか、彼女はゆっくり振り返る。
雪みたいに真っ白な肌に、栗色の髪を靡かせた、そう、まるで天使みたいな―――ユキの作った素敵な曲に、ピッタリな女のコ。
目が合った瞬間、その子から目が離せなかった。
「………」
「モモ、どこ見てるんだ?……あれ。おかりん、向こうにいる美人は誰?」
「ああ、小鳥遊プロさんからデビューする噂の新人さんです。挨拶回りにきてるんじゃないかな?すごく綺麗な子ですよね!デビュー前なのに、業界内で話題になってるんですよ」
「へえ。随分可愛い子だね。ね、モモ」
―――体中に、電流が走ったような感じ。
漫画とかでよくあるじゃん?あんなのありえないだろって鼻で笑ってたけど、本当にあったんだって、その時初めて知った。
目が離せなくて…そこから動くことができなかった
いま、走らなかったら。オレ、多分一生後悔するって、そう思った。