第14章 追憶の幻想曲
「いやー、まさか、八乙女がわっしょいわっしょいってやると思わなかったよな」
良い感じに酒の入った大和が、こけら落としを懐かしむように言った。
「ぶっちゃけ、ファンの反応どうだったん?」
三月の問いに、楽が嬉しそうに答える。
「半々。俺は楽しかったぜ。こけら落とし最終日で一番盛り上がったのはあそこだと思ってるから」
「いや、メインは僕らだから」
千の突っ込みに笑いが起こる。
「あの……いい加減進行しませんか?楽曲や振付のテーマ決めないと……」
「そういえば、二階堂、大丈夫なのか?あの後、あっちの……」
一織の言葉などまるで聞こえていないかのように、楽が続ける。
「ああ、まあね。あの人が引退してからパターン変わってきたけど」
「どんな風に?」
「おめーの親父には随分世話になったなあって方向。うっせーなバラすぞコラって応戦してっけど」
「なんかあったら相談しろよ。一応、これでも社長子息だからさ」
「あははは!八乙女は本当にイケメンだよなあ。ま、気持ちだけもらっとくよ。お酌します」
「おう、親父さんによろしくな」
大和は楽にお酌をしてから、隣に座っている零に向かって口を開いた。
「零ちゃん、全然進んでないんじゃない?たまにはお兄さんに付き合ってよ」
いいながら、大和は零のコップにも酒を注ぎ始める。
『うん!ありがとう、大和くん』
「あ、大和!だめだめ、零にはあんまり飲ませすぎないで!」
慌てて立ち上がった百が大和の手を止めれば、大和がきょとん、と首を傾げた。
「え?零ちゃん、お酒弱いんでしたっけ?」
「いや、弱いっていうか……うん、飲みすぎると色々良くない方向にいっちゃうっていうか」
「ああ~…でも、アレはアレで…」
王様ゲームをしたあの日のことを思い出しながら、大和はにやけ顔を抑えるように右手で口元を隠した。