第14章 追憶の幻想曲
二人を心配する千の横で、冷蔵庫を漁っていた楽が嬉しそうに言った。
「お!冷蔵庫、酒あった!」
「やった、飲もう」
そんな楽にのってくる大和。
そして、しめた、とばかりに口を開く千。
「零、モモ。僕たちも飲もう」
「オレはいいけど、零は駄目だよ。バンさんに怒られちゃう」
「いいじゃないか、今日くらい。零、車酔いは酒で治るんだよ。知ってた?」
「『え、そうなの!?』」
千の嘘に、見事に引っかかる百と零。
千は、気まずそうな二人をなんとかしたい一心だった。
百と零のことを、ずっと前から一番近くで見守って来たのだ。百の気持ちもわかるけれど、このまま終わらせるなんて、千はどうしても納得できなかった。
零は酔うと甘えん坊になる。百は酔ってもあまり変わらないが、多少酒が入って甘えん坊な零を前にすれば考え直してくれるかもしれない。そんなことを思いながら、缶チューハイを開けさっと零と百に差し出した。
「乾杯」
「「「乾杯!」」」
* * *
―――会議室。
「………大丈夫かしら」
酒杯を交える成年組の様子をモニターで見ながら、姉鷺が言った。
「まあ、最初はレジャー気分もかねて、こんな感じじゃないでしょうか……」
「龍之介が飲みすぎたら、一回、カメラ止めてちょうだい」
「あの……うちの成人組もそれでお願いします!」
岡崎に、姉鷺と紡が続く。
そして、モニターを睨みつけるように見ていた万理が呟くように言った。
「……千のやつ……余計なことだけはしてくれるなよ……」
零と百にやたらと酒を勧めようとしている千に、万理は一人肝を冷やしていたのであった。