第14章 追憶の幻想曲
「この度は、ご協力頂きまして」
制作スタッフが、会議室で言った。
其処には、Re:valeのマネージャーである岡崎、零のマネージャーである万理、IDORiSH7のマネージャーである紡、TRIGGERのマネージャーである姉鷺、の四人が集められており、大きめのモニターを囲んでいる。そのモニターには熱海の別荘へと向かっている13人の様子が映し出されていた。
「こちらこそ、よろしくお願いします。合宿中も撮影するんですよね?」
「編集には気を使ってちょうだいね。TRIGGERのイメージを損ねないか、厳しくチェックさせてもらうわ」
「零ちゃん、女の子一人だし、大丈夫かなぁ…。作詞なんてしたことないのに…」
「24時間密着、衣装デザイン、ともにIDORiSH7にとっては初めてのチャレンジです…。みなさん、がんばってください!」
そんなマネージャーたちの心配や応援を余所に、13人はいよいよ熱海の別荘へとたどり着いていた。
合宿所の別荘は、海の見えるとても広くて綺麗なところだった。まるで高級旅館のような佇まいに、未成年組は早速はしゃいでいる。
「即興できるタイプじゃないのに……」
「大丈夫、大丈夫!ユキは天才、ユキはイケメン!」
不安そうな千を、いつものように元気づけようとする百。
「気が重い……。零、大丈夫か?」
『……うん……』
千以上にげんなりとしている零の様子に、千と百は心配そうに眉根を寄せた。
「零、大丈夫?酔い止め、効いてない?」
百の言葉に、零は無理に笑いながら口を開いた。
『ごめん……普段乗り物酔いなんてしないんだけど……。作詞なんてやったことないから、考えてたら気が重くて……あはは』
そんな零の背中を、百がぽんぽんと遠慮がちに叩いた。
「大丈夫だよ、零。ユキも、勿論オレも……手伝うしっ!三人で頑張ろう?ね!」
『…うん…。ありがと、百……』
「………」
普通に話しているように見える零と百だけれど、千からしてみればそれはとてもぎこちのないものだった。