第14章 追憶の幻想曲
「零ちゃん、おめでとう。Friends Dayのチャリティパーソナリティが正式に決定したよ!」
ドラマの撮影がひと段落し、休憩していた零に万理が嬉しそうに言った。
『ありがとうございます!……大仕事だけど、大丈夫かな』
「大丈夫だよ、Re:valeと一緒なんだし。それに、パーソナリティ枠としてIDORiSH7とTRIGGERも決まったそうだよ。うちの事務所から二グループもあのFriends dayに出られるなんて、すごいことだよね」
『……そうですよね!頑張りますっ!』
そうは言ったものの、零の心はどこか晴れないままだった。
百と別れたあの日以来、胸にぽっかりと穴が空いたような感覚に苛まれていて。
ドラマの撮影も終盤に差し掛かっていて特に忙しくしている今でさえ、空き時間には気づけば百のことを考えている自分がいるのに。ドラマの撮影が終わって落ち着いたら、どうなってしまうんだろう。
今までは、オフがあれば百と過ごすことが当たり前だった。
―――なら、これからは?友達に戻ったとはいえ、以前と同じように、なんて、無理な話だ。そんなことばかり考えてしまって、今はオフができるのも暇な時間が出来るのも怖かった。
番組で一緒になっても、百は至って普通だった。今までと同じように高いテンションで話しかけてくれるし、笑いかけてくれる。けれど、近いのに遠い、そんな距離を感じずにはいられなくて。
百が今まで頑張ってくれた分、今度は自分が頑張りたいと天に言った言葉は、嘘なんかじゃない。
でも、正直なところ、どうしていいのか自分でもよくわからなかった。
「そろそろ始まるよ。行ける?」
万理の声に、顔を上げる。
―――今は。目の前の仕事を頑張らなくちゃ。
気合いを入れるように頬を叩いてから、重い腰を上げた。