第14章 追憶の幻想曲
「おめでとうございます!チャリティレンソン”Friends Day”のメインパーソナリティ、正式に決定しましたよ!」
岡崎事務所では、岡崎の明るい声が響いていた。
「ありがとう。大仕事だけど頑張るよ。……ね、モモ」
「……あ、うん!勿論!オレとユキならこなせるよ!」
百の空元気に、千と岡崎は顔を見合わせる。
零との一件以来、百はずっとこの調子だった。決して落ち込んでいる姿は見せないし、泣き言は愚か弱音だって一言だって吐かない。けれど、いつもどこか上の空で、空元気の中で無理して笑っているのが、二人には見て取れた。
「……モモ……」
「……あれ?下岡さん、出ないの……?」
共演者リストを見つめながら、百が言った。
「なんでも、お体の調子が悪いそうで、ご辞退されたそうですよ」
岡崎の言葉に、百は眉を顰める。
「そうなんだ?下岡ちゃん、発起人の谷山さんのお弟子さんなのに。前に一緒になった時は、死ぬまでずっと、五分でもいいから出させてもらいたいって、言ってたんだよ」
「……毎年出演が恒例だった人も、何人か見ないな」
「……あ……。ツクモ所属の有名な人がいないんだ」
「なるほどね……。どっちにしろ眠れない夜になるね」
「こんなの爆弾仕掛けましたって言われてるのも同然じゃんか……。あの野郎……」
徐々に狂い始めた歯車の脅威が、刻一刻と彼等に迫っていた。