第3章 交錯する想い
スタジオのセットを確認してから、百の「まだ話したいことがあるんだけど!」というわがままを無視してそれぞれ楽屋へと戻る。
零が楽屋へ戻れば、零のマネージャーと共に音晴がお菓子を並べて笑顔で迎えてくれた。社長だというのにも関わらず、彼はこうして時折零の付き添いをしてくれている。
「零ちゃん、セットの確認は済んだかな?」
『社長、お疲れ様です。今日も来てくれたんだ』
「うん、IDOLiSH7のweb番組を宣伝してくれるんだって?みんなすごく喜んでいたよ」
『あ、はい。そんな、大したことじゃないのに』
「いやあ、大したことだよ?女性アイドルのトップと男性アイドルのトップの番組で紹介してもらえるなんて、そんなチャンスないよ!零ちゃん、ありがとうね」
音晴の言葉に、零は頬を赤らめぷいっとそっぽを向いてから席に着く。
『…っ別に…お礼を言うのは私の方ですし!私が売れたのだって、社長のおかげだもん』
「零ちゃんは本当に謙虚だねえ。売れたのは君の実力で私は何もしてないよ」
「あはは、零ちゃん照れてる」
『マネージャーはうるさいです!』
零は照れ隠しのように、ペットボトルの水をぐいっと飲み干す。けれど、すぐにこれが水でないことに気づいて咳き込んだ。
『ごほっ…!水じゃない…!これ』
「あ、それさっき百くんが持ってきたやつ」
『やっぱり……。もう、ももりん飽きたよー…私はコーラ派なのに…』
うんざりと顔を歪め、とほほと肩を落とした。百は収録の時、必ず零の分のももりんも用意して持ってくるのだ。
「あはは、いいじゃないか。ももりん、美味しいよ?」
『私は断然コーラ派です。百のやつ、知ってるくせにわざとももりん置いてくんだから』
零がぶすくれていれば、コンコンと簡素なノックの音が聞こえてきた。社長が返事をすれば、失礼します、と楽屋の扉が開く。
「今日NEXT Re:valeにゲスト出演させて頂く山南梢です。よろしくお願いします」
入ってきたのは、最近黒川芸能事務所で売り出し中のアイドル山南梢と、そのマネージャーだった。