第13章 ロストロングラブレター
―――壊れそうだ。
自分で選んだくせに
覚悟なんてもうとうの昔にできているはずなのに
すべてを投げ打って、今、ここでキミの手を掴んだら――キミはボクを選んでくれるの?
そんなことが頭を過ってしまうくらい
自分に呆れるよ
笑われた方が、まだましだった。
キミの中で、過去になってしまったボクは
先に進んで行ってしまうキミの背中を見つめたまま、立ち止まったまま、進めずにいるのに。
キミが欲しいと、苦しいほどに焦がれてきた。
自分の人生を彼女に捧げることなんて、どんなに望んでも、焦がれても、出来はしないくせに。
九条さんの夢を叶えると決めた時から、自分が背負う運命の大きさを自覚してるつもりだった。けれど、同時に失わなければいけないものの大きさを、今、改めて知った。
痛いほどに。
苦しいほどに。
『……天?』
零の声に、はっと我に返れば。彼女は心配そうな顔つきで、こちらを見上げていた。
――そんな顔、しないでよ。
無理やり鍵をかけて閉じ込めた想いが、今にも溢れてきそうなのに。
「……そうだね……意地悪を、言ってみたくなっただけ」
『もう!やめてよ、心臓に悪い!』
「………」
『……天。………本当に、ありがとう。』
そう言って、零は笑った。
――やっぱりキミは、そうやって笑っている方が素敵だよ。
泣いてる顔も、照れてる顔も、拗ねてる顔も、全部、全部好きだけど。
キミにはやっぱり、笑顔が一番似合う。
太陽に照らされてきらきら咲く向日葵みたいに。
これからもずっと。
そうやって笑っていて。
『万理さんも姉鷺さんも心配するよね、そろそろ行こっか』
「……そうだね」
前を歩いていく零の背中は凛としていて、なんだかやけに頼もしく感じて。
もう、自分が守らなくちゃいけなかった弱い零はいないんだって、思い知らされるようだった。