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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第13章 ロストロングラブレター





―――壊れそうだ。



自分で選んだくせに

覚悟なんてもうとうの昔にできているはずなのに



すべてを投げ打って、今、ここでキミの手を掴んだら――キミはボクを選んでくれるの?



そんなことが頭を過ってしまうくらい


自分に呆れるよ


笑われた方が、まだましだった。



キミの中で、過去になってしまったボクは

先に進んで行ってしまうキミの背中を見つめたまま、立ち止まったまま、進めずにいるのに。



キミが欲しいと、苦しいほどに焦がれてきた。

自分の人生を彼女に捧げることなんて、どんなに望んでも、焦がれても、出来はしないくせに。

九条さんの夢を叶えると決めた時から、自分が背負う運命の大きさを自覚してるつもりだった。けれど、同時に失わなければいけないものの大きさを、今、改めて知った。

痛いほどに。
苦しいほどに。




『……天?』



零の声に、はっと我に返れば。彼女は心配そうな顔つきで、こちらを見上げていた。

――そんな顔、しないでよ。

無理やり鍵をかけて閉じ込めた想いが、今にも溢れてきそうなのに。




「……そうだね……意地悪を、言ってみたくなっただけ」

『もう!やめてよ、心臓に悪い!』

「………」

『……天。………本当に、ありがとう。』



そう言って、零は笑った。



――やっぱりキミは、そうやって笑っている方が素敵だよ。


泣いてる顔も、照れてる顔も、拗ねてる顔も、全部、全部好きだけど。


キミにはやっぱり、笑顔が一番似合う。



太陽に照らされてきらきら咲く向日葵みたいに。



これからもずっと。


そうやって笑っていて。





『万理さんも姉鷺さんも心配するよね、そろそろ行こっか』

「……そうだね」



前を歩いていく零の背中は凛としていて、なんだかやけに頼もしく感じて。

もう、自分が守らなくちゃいけなかった弱い零はいないんだって、思い知らされるようだった。


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