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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第13章 ロストロングラブレター






「千くん。百くんと連絡つきました?」


岡崎が訊ねれば、千は眉を顰めた。


「……いや。零とお楽しみ中かな。それにしても長いよね」

「まあ、久しぶりですから……。でも、連絡がないのは心配ですね。いつもなら、割とすぐに折り返しが来るはずなんですけど」

「もう一度、掛けてみようか」


電話を掛ければ、無機質な呼び出し音が鳴り始める。何度も呼び出し音が鳴ってから、もうこれは出ないかな、なんて諦めようとしていれば。



≪……もしもし≫


電話の向こう側から聞こえてきた百の声は、ひどく沈んでいて。


「………モモ?」

≪……ユキ……ごめん、電話くれてた?携帯見てなくて……≫

「いや……。零と一緒じゃないのか?」

≪あ……うん≫

「……何があった?」

≪……何も……!零の顔見て、帰ってきただけ!≫

「嘘を吐くな」

≪………。……あはは……っ。…ばれた?≫

「……当たり前だ。何があった?」

≪……。……零に、友達に戻ろうって言ってきた≫

「……は?」

≪もう、自分をこれ以上嫌いになりたくなくて…。…はは……、かっこ悪い、よね≫

「かっこ悪いもんか。今どこにいる?事務所に帰って来い、今直ぐ」

≪ごめん……今はそっとして……。一人にさせて。……大丈夫、安心して。明日からはちゃんと、元気なモモに戻ってるからっ!≫



百との電話を切ってから、千は小さくため息を吐く。




「……神様はやっぱり意地悪だったよ、モモ」



ぼそりと呟いた言葉は、静かな夜に儚く消えていった。

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