第13章 ロストロングラブレター
「千くん。百くんと連絡つきました?」
岡崎が訊ねれば、千は眉を顰めた。
「……いや。零とお楽しみ中かな。それにしても長いよね」
「まあ、久しぶりですから……。でも、連絡がないのは心配ですね。いつもなら、割とすぐに折り返しが来るはずなんですけど」
「もう一度、掛けてみようか」
電話を掛ければ、無機質な呼び出し音が鳴り始める。何度も呼び出し音が鳴ってから、もうこれは出ないかな、なんて諦めようとしていれば。
≪……もしもし≫
電話の向こう側から聞こえてきた百の声は、ひどく沈んでいて。
「………モモ?」
≪……ユキ……ごめん、電話くれてた?携帯見てなくて……≫
「いや……。零と一緒じゃないのか?」
≪あ……うん≫
「……何があった?」
≪……何も……!零の顔見て、帰ってきただけ!≫
「嘘を吐くな」
≪………。……あはは……っ。…ばれた?≫
「……当たり前だ。何があった?」
≪……。……零に、友達に戻ろうって言ってきた≫
「……は?」
≪もう、自分をこれ以上嫌いになりたくなくて…。…はは……、かっこ悪い、よね≫
「かっこ悪いもんか。今どこにいる?事務所に帰って来い、今直ぐ」
≪ごめん……今はそっとして……。一人にさせて。……大丈夫、安心して。明日からはちゃんと、元気なモモに戻ってるからっ!≫
百との電話を切ってから、千は小さくため息を吐く。
「……神様はやっぱり意地悪だったよ、モモ」
ぼそりと呟いた言葉は、静かな夜に儚く消えていった。