第13章 ロストロングラブレター
『……天はすごいね…。どんな悩みも、解決してくれちゃうんだもん』
「……まあね。でも、零限定だよ」
『え?』
「なんでもない」
そういって、天は零の頭を優しく撫でた。
『……ねえ、天、さっきの話の続き……なんだけど』
「…うん」
『キミは笑う?って、言ったよね。……笑うわけないよ。だって……今だから言うけど、私、ずっと天のこと、忘れられなかったんだ』
「………」
『天は私の初恋だったから。きっとこの人以上に好きになれる人なんて、二度と現れないんだろうなって、ずっとそう思ってた。だから自分は、一生恋愛なんてしないでこの先生きていくのかもって…。でもね、こけら落としの日、百が私を好きって言ってくれたの。最初はびっくりして…百は私にとってずっと一番の友達だったし、まさかそんな風に思ってくれてるなんて思わなかったから…。でも、真剣な百を見てたらね、この人と一緒に前に進んでいきたいって思えた。天のことを忘れるなんて、そんなことは一生無理なんだけど。でも、百と一緒なら……綺麗な思い出にできるって、そう思った』
零の口から一生懸命に紡がれる言葉が、胸に刺さるようだった。
『最初は不安だった…百のこと傷付けちゃうんじゃないかって。でも、百と一緒に過ごす度、どれだけ自分が百に救われてきたのか知った。百が自分にとって、何よりも大きな存在になってたことを知った。……私、ちゃんと、百と一緒に前に進めたんだって……そう思った』
―――それ以上、言わないで
『正直言うとね、私、多分どこかで期待してたんだ。天が私の手を離したのは、何か理由があったんじゃないかって。……でもね、こけら落としの日に、ちゃんとわかった。天は自分の意思で、自分の道を進んだんだ、って。……だから、さっきのあの台詞が本当だったとしても、笑わないよ。私がずっとそうだったから。でも、そんなことはありえない。そうでしょ?わかるよ、それくらい。でも、さすがにびっくりしちゃった。演技だってわかってても、すごいどきどきしたっ!』