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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第13章 ロストロングラブレター



『……私……百のこと、幸せにしてあげたかったんだ……』

「………」

『……でも、無理させてばっかりで……余計に苦しめてた。……あんな優しい人のこと傷つけるなんて……最低だよ、私……』



――そう言って、眉を下げながら笑った零が。今にも消えてしまいそうなくらい儚くて。

瞬間、必死に食い止めていた想いが、溢れ出した。

思わず腕を伸ばして、気付けば震える彼女の肩を抱き締めていた。



『天……っ!?』

「………バカだね、零は」

『え……?』

「……何、諦めようとしてるわけ。百さんが、どんな思いでずっとキミの傍にいたと思ってるの」

『………』

「それをキミは簡単に諦めるの?」

『でもっ……!』

「大丈夫だよ、零」


言ってから、天はゆっくりと零の体を解放した。
不安そうに見上げる零に向かって、天は優しく微笑む。


「キミの想いは、ちゃんと届くから」

『………っ』

「何があったか知らないけど、自分の言葉でちゃんと伝えたの?どうせ、ぼろぼろ泣くばっかりで何も言えなかったんでしょう」

『………でも……。百は私と一緒にいるの、辛いって……』

「だからって諦めるわけ?キミさぁ……百さんがどんな思いでそう言ったかわかる?自分が辛いからって、辛いなんて言うような人じゃないよね。あの人がどんな人か、キミが一番わかってるんじゃないの?」

『………それは…』

「百さんはいつだってキミのことを一番に優先して、一番に大事にして動く人だよ。キミが傷付かないように、キミが笑顔でいられるようにって」

『……うん……』

「……だから今度は、零が頑張る番なんじゃない。一度失ってしまったものを取り戻すのは簡単なことじゃない。でも、一度離しかけた手をそのままにしてしまったら……もう、二度と。その手を掴むことはできないよ」



―――そう。ボクみたいに。



『……ありがとう、天……。ちょっと、元気出た。私……諦めないで頑張る…。百が頑張ってくれた分、今度は私がっ!!』

「……本当、キミって単純だよね」

『え…!?』



―――単純すぎて、まっすぐすぎて。そんなところが大好きなんだけど、正直羨ましくて、妬ましい。つい意地悪したくなってしまう、ボクをどうか許して。


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