第13章 ロストロングラブレター
『……私……百のこと、幸せにしてあげたかったんだ……』
「………」
『……でも、無理させてばっかりで……余計に苦しめてた。……あんな優しい人のこと傷つけるなんて……最低だよ、私……』
――そう言って、眉を下げながら笑った零が。今にも消えてしまいそうなくらい儚くて。
瞬間、必死に食い止めていた想いが、溢れ出した。
思わず腕を伸ばして、気付けば震える彼女の肩を抱き締めていた。
『天……っ!?』
「………バカだね、零は」
『え……?』
「……何、諦めようとしてるわけ。百さんが、どんな思いでずっとキミの傍にいたと思ってるの」
『………』
「それをキミは簡単に諦めるの?」
『でもっ……!』
「大丈夫だよ、零」
言ってから、天はゆっくりと零の体を解放した。
不安そうに見上げる零に向かって、天は優しく微笑む。
「キミの想いは、ちゃんと届くから」
『………っ』
「何があったか知らないけど、自分の言葉でちゃんと伝えたの?どうせ、ぼろぼろ泣くばっかりで何も言えなかったんでしょう」
『………でも……。百は私と一緒にいるの、辛いって……』
「だからって諦めるわけ?キミさぁ……百さんがどんな思いでそう言ったかわかる?自分が辛いからって、辛いなんて言うような人じゃないよね。あの人がどんな人か、キミが一番わかってるんじゃないの?」
『………それは…』
「百さんはいつだってキミのことを一番に優先して、一番に大事にして動く人だよ。キミが傷付かないように、キミが笑顔でいられるようにって」
『……うん……』
「……だから今度は、零が頑張る番なんじゃない。一度失ってしまったものを取り戻すのは簡単なことじゃない。でも、一度離しかけた手をそのままにしてしまったら……もう、二度と。その手を掴むことはできないよ」
―――そう。ボクみたいに。
『……ありがとう、天……。ちょっと、元気出た。私……諦めないで頑張る…。百が頑張ってくれた分、今度は私がっ!!』
「……本当、キミって単純だよね」
『え…!?』
―――単純すぎて、まっすぐすぎて。そんなところが大好きなんだけど、正直羨ましくて、妬ましい。つい意地悪したくなってしまう、ボクをどうか許して。