第13章 ロストロングラブレター
『……天……、あの…さっき、ごめんね。話の途中で……えっと』
「ボクのことはいいから。で、なんで泣いてるの?」
『………』
「……零。キミは覚えてないかもしれないけど、今までボクが、キミの悩みを解決できなかったことが――」
『ないよ!!一度もない……。昔から、いつだって天は私の悩みを解決してくれたよ…っ!!……今日みたいに熱かったあの夏の日だって……ブランコで落ち込んでた私を、一生懸命元気づけてくれたよね……覚えてるよ、全部覚えてる』
零の言葉に、天の心臓はとくり、と音を立てた。
『……でもね、でも……、今回のことはね……そういうんじゃないの…解決するとか、しないとかじゃなくて……気持ちの問題、っていうか……』
困ったように笑いながら言う零に、天が言った。
「……百さんになら、解決できるの?」
『え……?なんでそこで百が出てくるの……』
「……見てればわかるよ。……百さんのこと、好きなんでしょう」
驚いたように、零は大きく目を見開く。
―――どれほど長い間、キミを見てきたと思ってるの。
ボクは誰よりも、キミを知ってるのに。
楽しそうに笑う顔も。
幸せそうに細める目も。
照れると紅く染まる頬も、そっぽを向く癖も。
ボクだけに向けられていた仕草や、表情、全部、全部知ってる。
でも、それが今向けられている人は―――ボクじゃないから。
尚更、わかるんだよ。
『………うん………』
――自分から聞いておいて、途方もない後悔に襲われる。
聞けば自分を苦しめるだけだと分かっていたのに。気付けば口にしていた。
手を伸ばせば簡単に触れることも、抱きしめることも出来るのに、決して求めてはいけない苦しさがどうしようもなく胸を締め付ける。
零は震える唇を小さく開いて、ゆっくりと話し始めた。