第13章 ロストロングラブレター
VTRチェックを終えてから、スタッフの人たちに挨拶を交わす。零が控室に戻ろうとしていれば、後ろから腕を掴まれた。
「――待って」
振り返らずともわかる声に、零は無理に笑顔を作って振り返って見せた。
『……天、さっきごめんね。話の途中だったのに』
「――なんで泣いてるの?」
天の言葉に、零は慌てて続ける。
『え?何言ってるの、どう見たって笑ってるじゃん…!化粧取ったから浮腫んでるみたいに見えるだけ――』
「ボクに嘘は吐かないで」
天の真っ直ぐな視線と言葉に、零は言いかけようとして開いていた口をゆっくり閉じてから俯いた。
やっぱり、天にはお見通しだったみたい。なんて言い訳しよう、なんて考えていれば、天が続けた。
「……百さんと、何かあった?」
天の言葉に、おそるおそる顔を上げてみれば。
心底心配そうに眉根を寄せる天と目が合って。
『…………、』
「……来て」
『え……?』
天は有無を言わさず、そのまま零の腕を引いた。駆け寄ってきた万理に”すみません、少しだけお借りしますね”なんて爽やかな笑顔で言ってから、腕を引いたままどんどん歩いていく。
『ちょっと……天、どこ行くのっ』
「いいからついてきて」
いつも人目を気にする天が、こんな行動に出るなんて珍しいと零は思った。共演者はほとんどもう掃けていたし、室内に残っているのなんて数人のスタッフだけだったけれど、完璧主義の天はいつだって冷静で、自分のイメージを決して損なわないよう隅々にまで気を配る、そんな人なのに。
そんなことを考えながら天の背中を追っていれば、ひと気のまるでないスタジオの裏庭にたどり着いて、天は足を止めた。
何も話そうとしない天に、零はおそるおそる口を開く。