第13章 ロストロングラブレター
「零ちゃん、百くんと会えた?」
控室に戻れば、万理が心配そうに訊ねた。
『あ…はい!あの、大丈夫ですよ!本当に急用が入っちゃったみたいで』
「そうなの?…じゃあ、俺の思い過ごしかな……。ごめんね」
『いやいや!万理さんは何も悪くないです』
「千から電話が掛かってきてさ。百くんが元気ないからって。でも、零ちゃんに少しでも会えたならよかったよ。これで百くんが少しでも元気になってくれたらいいな」
『……。……そう、ですね……』
万理の言葉に、零は俯く。
―――百は今、どんな顔をしているんだろう。
泣いてないかな?無理して笑ってないかな?
でも、例え百が泣いていたとしても、無理に笑っていたとしても。もう私にできることなんて何もないんだ、と思うと、胸が張り裂けそうだった。
「……零ちゃん?」
『…はいっ!?』
万理の声に、どきっとする。
眼鏡越しに万里の顔を見上げれば、彼は不思議そうに眉根を寄せていて。泣いていたことがばれるんじゃないかとひやひやしてしまう。
『……万理さん、すいません…!ここのところ長時間化粧してるのが続いてるせいか肌荒れ起こして…化粧取っちゃいました』
「え?ああ、それは全然かまわないんだけど……目が赤いのもそのせい?」
『はい……目が痒くて。一時的なものだと思うので、明日には治ると思うんですけど』
「そっか……ごめんね、最近ろくに休ませてあげられなくて。少しスケジュールを調整しよう。一日くらいオフを作って、百くんとゆっくり――」
『いや、大丈夫です!!百も忙しいだろうし!!Friends dayも良いスタート切りたいので。仕事しましょう!仕事!』
「………」
オフをくれ、が口癖の零から出てきた言葉に、万理はぎょっと目を見開いている。
「零ちゃん……やっぱり何かあった?」
『何もないですよ?あはは、気まぐれにやる気に溢れてるだけですっ!』
そういって笑ってみせれば、万理もつられて困ったように笑った。
―――万理さん、嘘をついてごめんなさい。
でも。
きっと今、万理さんに話したら。
抑えていた気持ちが、溢れてきちゃいそうだから。
もう少し、もう少しだけ
強がる私を許してください。