第13章 ロストロングラブレター
『……わかった……』
「………、」
零はぼろぼろと溢れる涙をごしごしと拭いながら、俯いた。
『……百の恋人として側にいれた時間は、今までにないくらい幸せだったよ。……ありがとう』
「…あはは……それはオレの台詞だよ」
―――最後まで、零はどこまでも優しいんだね。
さよならじゃない。
付き合う前に戻るだけ。
それだけ。
友達でいた期間の方が、ずっとずっと長いじゃんか。
あの頃は、想いが叶わなくてもいいって
どんな形でも零の傍にいられればいいって
思ってたじゃんか。
その時に戻る、それだけなのに
なのに、なんで
なんで。
胸が張り裂けそう
心臓に大きな穴が空いたみたい
息をするのが苦しいや
涙で前が見えないよ
「零……早く戻って。バンさんたちが心配する」
『……うん……』
「ほら……。さよならするわけじゃないんだから!モモは変わらず零の側にいるよ?誰よりも零を応援してるよ…っ!」
―――目の前で、君が泣いているのに
オレはもう、泣いている君さえ、抱き締めてあげられない。
『うんっ………』
お願い、どうか、振り返らないで
これ以上、惨めなオレを見ないで
最後くらい、カッコつけさせて。
遠くなっていく彼女の背中が、もう届かない場所に行ってしまうみたいで
思わず手を伸ばしてみる
届くわけなんてないのに
掴めるわけなんてないのに
―――神様、どうか
零の一生分の苦しみや、涙は、オレが背負うから
残りの彼女の人生が、笑顔と幸せで溢れますように
夜空に浮かぶ月に、願った。