• テキストサイズ

スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第13章 ロストロングラブレター





『……わかった……』

「………、」


零はぼろぼろと溢れる涙をごしごしと拭いながら、俯いた。


『……百の恋人として側にいれた時間は、今までにないくらい幸せだったよ。……ありがとう』

「…あはは……それはオレの台詞だよ」




―――最後まで、零はどこまでも優しいんだね。


さよならじゃない。

付き合う前に戻るだけ。

それだけ。


友達でいた期間の方が、ずっとずっと長いじゃんか。

あの頃は、想いが叶わなくてもいいって
どんな形でも零の傍にいられればいいって

思ってたじゃんか。


その時に戻る、それだけなのに


なのに、なんで



なんで。


胸が張り裂けそう

心臓に大きな穴が空いたみたい

息をするのが苦しいや

涙で前が見えないよ




「零……早く戻って。バンさんたちが心配する」

『……うん……』

「ほら……。さよならするわけじゃないんだから!モモは変わらず零の側にいるよ?誰よりも零を応援してるよ…っ!」



―――目の前で、君が泣いているのに

オレはもう、泣いている君さえ、抱き締めてあげられない。





『うんっ………』





お願い、どうか、振り返らないで


これ以上、惨めなオレを見ないで



最後くらい、カッコつけさせて。





遠くなっていく彼女の背中が、もう届かない場所に行ってしまうみたいで

思わず手を伸ばしてみる

届くわけなんてないのに

掴めるわけなんてないのに






―――神様、どうか



零の一生分の苦しみや、涙は、オレが背負うから


残りの彼女の人生が、笑顔と幸せで溢れますように





夜空に浮かぶ月に、願った。





/ 552ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp