第13章 ロストロングラブレター
『……本気で言ってる…?百は……それでいいの……?』
「……あったりまえじゃん!こんなこと、冗談で言わないよ。……最初に言ったでしょ?その時は、ちゃんと諦めるからって。……それに、少し前のオレ達に戻るだけだよ。それだけ」
『………』
「…なんで零が泣きそうな顔してんのっ!?ほら、笑って!オレの大好きな笑顔で……ねえ、笑ってよ」
大粒の涙が、瞳から零れ落ちた。
――とまらない。
上下に振ったコーラを開けたときみたい。目の奥から、どんどんどんどん溢れてくる。
そっと、百の震える手が伸びてきて。
ぼろぼろと零れてくる涙を拭ってくれる。
顔をあげれば、躑躅色の瞳と目が合って、百は優しく目を細めて笑った。
「……零、泣かないで」
――ねえ、百。
それで笑えてると思ってる?
泣きそうな顔してるのはどっち?
私じゃ、百を幸せにできないの?
結局、百を苦しめてばかりだね。
私は。
一番幸せにしたい人の、笑顔さえ守れない。
ずるいのは私だよ。
こんなに辛いなら、もういっそ、壊してくれればよかった。めちゃくちゃ傷付けて、嫌いになれたらよかった。
いや、もういっそ。あなたを知らなかった頃に、戻れたらよかった。
ねえ、百。
あなたは私の中で、いつのまにか
こんなに大きな存在になってたんだね。
気付くのが遅すぎたよね。
もっと早くに気付けていたら
何か変わっていたのかな?
百にこんな辛い思いをさせなくて済んだのかな?
ごめんね。
ごめんね、百。
私はあなたに数えきれないほどの幸せをもらったのに
私はあなたのために何もできなかった
かっこ悪いところを見せたくないなんて言うけれど
かっこ悪い百も、へたれな百も、泣き虫な百も
全部、全部。――大好きだったんだよ。