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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第13章 ロストロングラブレター




『……本気で言ってる…?百は……それでいいの……?』

「……あったりまえじゃん!こんなこと、冗談で言わないよ。……最初に言ったでしょ?その時は、ちゃんと諦めるからって。……それに、少し前のオレ達に戻るだけだよ。それだけ」

『………』

「…なんで零が泣きそうな顔してんのっ!?ほら、笑って!オレの大好きな笑顔で……ねえ、笑ってよ」



大粒の涙が、瞳から零れ落ちた。


――とまらない。

上下に振ったコーラを開けたときみたい。目の奥から、どんどんどんどん溢れてくる。


そっと、百の震える手が伸びてきて。
ぼろぼろと零れてくる涙を拭ってくれる。


顔をあげれば、躑躅色の瞳と目が合って、百は優しく目を細めて笑った。




「……零、泣かないで」





――ねえ、百。


それで笑えてると思ってる?

泣きそうな顔してるのはどっち?



私じゃ、百を幸せにできないの?


結局、百を苦しめてばかりだね。



私は。


一番幸せにしたい人の、笑顔さえ守れない。



ずるいのは私だよ。

こんなに辛いなら、もういっそ、壊してくれればよかった。めちゃくちゃ傷付けて、嫌いになれたらよかった。

いや、もういっそ。あなたを知らなかった頃に、戻れたらよかった。



ねえ、百。

あなたは私の中で、いつのまにか

こんなに大きな存在になってたんだね。


気付くのが遅すぎたよね。

もっと早くに気付けていたら
何か変わっていたのかな?


百にこんな辛い思いをさせなくて済んだのかな?



ごめんね。


ごめんね、百。



私はあなたに数えきれないほどの幸せをもらったのに

私はあなたのために何もできなかった



かっこ悪いところを見せたくないなんて言うけれど

かっこ悪い百も、へたれな百も、泣き虫な百も


全部、全部。――大好きだったんだよ。



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