第13章 ロストロングラブレター
『―――百っ!!』
スタジオを飛び出してしばらく道なりに走れば、寂しげな背中を視線の先に見付けて、思い切り叫んだ。
『待って……!!百……!!』
いつもだったら、こっちに向かって走ってきてくれるのに。振り返った百は、そこに立ち止まったまま。困ったように笑ってた。
「……零、どうしたの?そんなに走って」
『…っ百が……来てたって、聞いたから……っ』
「……そっか……」
『ねえ、どうしたの…?私に会いに来てくれたんじゃなかったの…?』
百は困ったように笑いながら、一度俯いて、小さく口を開いた。
「……話があってさ」
『話?何?』
「………」
しばらくの間を置いてから、百の口から出てきた言葉に思わず目を見開いた。
「……オレたち、友達に戻った方がいいと思うんだ」
その言葉を聞いた瞬間、頭が、真っ白になった。
『……え?急に………何で……?』
「………。……辛いんだ……。零が、天のことを好きだって、本当は気付いてた。オレはずるい奴だ。知らないふりをして、零の傍にいた。…そんな自分が、嫌になったんだ」
『………なに、を…』
「……これ以上、自分を嫌いになりたくない。これ以上、零にかっこ悪いところを見られたくない。……男の子はさ、いくつになったって、好きな女の子の前ではカッコつけていたいものなんだ。だから――」
だから―――。
” 友達に戻ろう ”
ゆっくりと、その言葉が頭の中で何度も、何度もリピートされる。
百の言葉に、頭が、心が、理解が、追いついていかない。
なんで?どうして?
百が忘れさせてくれるんじゃなかったの?
一緒に進んでくれるんじゃなかったの?