第13章 ロストロングラブレター
―――例えるなら、天は月だと思う。
本当は人一倍優しくて、誰よりも大切な人たちを想っているのに
それを決して表には出さずに、真っ暗闇の中で、こっそりと彼らを見守り、支えている
誰にも気づかれなくたって
どんなに辛くたって、悲しくたって
夜を照らす月みたいに、いつも同じ場所で、凛と輝いてる
強くて、綺麗で、かっこよくて。
イケメンで、完璧で。
オレにないものいっぱい持ってて。
始めから、オレが敵うわけなんてなかったんだよ。
零に出会った時から、零と天の間にオレが入る隙間なんてほんの少しだってなかったんだ。
零の隣が似合うのは、やっぱり天しかいないよ。
―――少しだけ、長い夢を見させてもらっただけ。
もう二度と見ることのできない、すごく、すごく、幸せな夢を。
最初からわかってたことだったのに
オレは零の優しさに甘えてた
このまま、この夢が醒めなければいいのに、なんて。何度も思ったりして
柔らかい唇とか、すべすべの肌とか、生温かい体温とか
照れた時に顔を逸らす仕草とか、無防備で可愛い寝顔とか
全部、全部、今でもこんなにはっきりと思い出せるのに
それが全部、夢でした、なんて
わかってるのに
わかってたのに
どうしてこんなに苦しいの?
どうしてこんなに辛いんだよ
誰か、教えてよ――。