第13章 ロストロングラブレター
―――ちゃんと仲直りしてほしい、なんて。
とんだ思い違いだった。
二人がこけら落とし以来気まずくなったのだって、オレが二人の間に入り込んだせいなんじゃないか。
オレの声が出なくなったせいで、零にも、天にも、迷惑をかけた上に、喧嘩までさせてしまったんだから。
それなのに。
オレは自分勝手に、零に気持ちをぶつけて。
優しい零に甘えて。
きっと、零は、本当は。
天のことを、忘れたかったわけじゃなかったんだ。
前に進みたかったわけじゃなかったんだ。
どうして、わかってやれなかったんだろう。
いや、本当はどこかでわかっていたのに、気付いていないふりをしていただけなのかもしれない。
オレが二人の間に入らなければ。
零を悩ませることも、天を悲しませることも、なかったかもしれないのに。
ブーブーとポケットの中で鳴っている電話を取り出してから、震える指で通話ボタンを押した。
≪もしもーし!百くん、今どこ――≫
「…バンさん……っ、すみません…ちょっと急用が入っちゃって……帰ります。せっかくバンさんが気を利かせて呼んでくれたのに、本当すいません……!オレが来たこと、零には言わないでおいてもらえますか…?」
≪え!?ちょっと、百くん!?≫
「…すいません……、本当に……ごめんなさい、バンさん……」
≪……百くん……≫
――これ以上、バンさんの優しい声を聞いていたら。
こらえられるものも、こらえられなくなりそうだった。
電話を切ってから、スタジオを出る。
目頭に溜まった熱いものが零れないように、必死に上を見上げた。
真っ暗な空には、月がぽつりと浮かんでいて。