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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第13章 ロストロングラブレター





―――ちゃんと仲直りしてほしい、なんて。


とんだ思い違いだった。

二人がこけら落とし以来気まずくなったのだって、オレが二人の間に入り込んだせいなんじゃないか。

オレの声が出なくなったせいで、零にも、天にも、迷惑をかけた上に、喧嘩までさせてしまったんだから。


それなのに。

オレは自分勝手に、零に気持ちをぶつけて。
優しい零に甘えて。


きっと、零は、本当は。

天のことを、忘れたかったわけじゃなかったんだ。

前に進みたかったわけじゃなかったんだ。

どうして、わかってやれなかったんだろう。

いや、本当はどこかでわかっていたのに、気付いていないふりをしていただけなのかもしれない。



オレが二人の間に入らなければ。

零を悩ませることも、天を悲しませることも、なかったかもしれないのに。



ブーブーとポケットの中で鳴っている電話を取り出してから、震える指で通話ボタンを押した。


≪もしもーし!百くん、今どこ――≫

「…バンさん……っ、すみません…ちょっと急用が入っちゃって……帰ります。せっかくバンさんが気を利かせて呼んでくれたのに、本当すいません……!オレが来たこと、零には言わないでおいてもらえますか…?」

≪え!?ちょっと、百くん!?≫

「…すいません……、本当に……ごめんなさい、バンさん……」

≪……百くん……≫



――これ以上、バンさんの優しい声を聞いていたら。

こらえられるものも、こらえられなくなりそうだった。


電話を切ってから、スタジオを出る。
目頭に溜まった熱いものが零れないように、必死に上を見上げた。


真っ暗な空には、月がぽつりと浮かんでいて。




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