第13章 ロストロングラブレター
――「……それだけ?」
――『え……いや、他にもいっぱいあるよ?本当はすっごい優しくて、いつも助けにきてくれて…悩んでると、いつもなんでも解決してくれて……』
――「………」
――『歌も、ダンスも……見惚れちゃうくらい上手なとことか……なんだかんだわがまま聞いてくれるところとか、仕方なさそうに笑う顔とか……たまに可愛いとことか、カッコいいとことか!ていうか、全部!あはは……っ、考えてみれば、天に悪いところなんて、一つもないや!』
零と天の声だとわかって、思わず足が竦んだ。
――「……よくそんなこと恥ずかしげもなく言えるね」
――『え?私なんか恥ずかしいこと言った?』
――「……はあ…」
――『あと、演技力もびっくりしちゃった。天は本当にすごいよね……アドリブなんて、私考えたこともなかったもん。天はアイドルだけじゃなくて、役者さんの才能もあるね!小さい頃から、天はなんでもできたから。完璧な、正義のヒーローみたいに』
聞こえてくるのは、二人の楽しそうな声だった。
盗み聞きなんてしたくないのに、頭が真っ白になって、足が竦んで、思う様に動かない。
声だけで、もうわかってしまう。
楽しそうで、幸せそうで。二人が今どんな顔をしているのかなんて、見なくたってわかる。
――「……言ったでしょう。零の前では演技なんてしてないって」
――『え?』
――「さっき言った台詞が、本当だって言ったらどうする?キミは、笑う?」
もう、これ以上聞いてなんていられなかった。
拳で思い切り足を殴って、漸く動き出した両足で出口の方へと無我夢中で走る。